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ハジメテノオト

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先日初音ミクの「Tell Your World」を買って、そのあといろいろ調べていたらちょっとびっくりした曲に出会ったと書きました。その曲がこちら

hajimetenooto.png
初音ミク「ハジメテノオト」

最初この曲を知ったのは、初音ミクの曲で何かないかな?と思ってネットで探していたら、昨年アメリカロサンゼルスで開催された初音ミクのコンサート「ミクノポリス」というイベントの最後の曲がこの曲だったという記事を見つけ、そのレポートを読んでいくと、この曲が大変高い評価をされていたので聞いてみました。

で、感想ですが

おじさん不覚にも目頭が熱くなりました

いやー、まさかボカロの曲で40目前のおじさんがうるっと来るとはねー。

初めての音は なんでしたか?
あなたの 初めての音は…
ワタシにとっては これがそう
だから 今 うれしくて


この出だしから始まる「ハジメテノオト」私はこれを聞き終わった時にレイ・ブラッドベリの書いた「歌おう、感電するほどの喜びを!」の内容を思い出しました。

母親を亡くした父親と3人の小さな子供たちの家があり、父親は子供たちの面倒を見てもらおうと"機械おばあさん"を買います。機械おばあさんは見た目は完璧な人間のおばあさんで、料理も掃除も子供たちとのコミュニケーションも完璧です。しかしそんな完璧なおばあさんを子供の1人は好きになろうとはしません。好きになってしまったらいつかおばあさんも母親のようになくなってしまうのではないか?と心配になったからです。

また、父親も機械おばあさんの完璧さに次第にいらだち始め、ついにおばあさんに「あんたは、ここの人じゃない!」と言ってしまいます。それに対しておばあさんは「そうです。私は、みなさんの忘れたものを思い出させてあげるのです」と言います。そしてそのあと「愛とは何か?その議論はあと千年も万年も続くでしょう。多分、愛とは、私たちを自分自身に立ち返らせてくれる誰かの力ではないか、そう悟る日がくるかもしれません」と続けます。

おばあさんは機械ですから完璧な記憶力を持ちます。ですから「私は、一家が忘れてしまったものを宝物のように大事に取っておくことが出来る。私は自分自身を知らない。私は感じることは出来ない。でも、ここに"ある"のだと。そしてここにいることで、みんなが感じ、味わい、感動する力は、さらに大きくなるのだろう」と語ります。

やがて子供たちも大きくなって、おばあさんが引き取られていく日が来ます。おばあさんは、私は会社に戻り、何人かの仲間とともに、ずっとあなた方の思い出を語り続ける。そうしていれば、あのピノキオのようにいつか本物の魂を手に入れることができるかもしれない、と言います。

そして3人の子供たちが年を取りもう1度おばあさんを呼びます。「おばあさん、僕らに必要になった時は、帰ってきてくれると言いましたよね」と言うのです。

私たちは時間の経過とともに色んなことを忘れ、自分の記憶を美化します。それはどうしようもない事実です。でも、機械おばあさんも、初音ミクも"機械"ですから忘れる、記憶を改ざんするということはありません。ただ、それは逆に「自分の意志で動く」「自分で思い出を作る」と言ったことも出来ません。

私たちがそこに加わることで、「一緒に思い出を作る」「忘れたくない思い出を作る」ということが可能になります。ハジメテノオトの歌詞の中で

やがて日が過ぎ 年が過ぎ
世界が 色あせても
あなたがくれる 灯りさえあれば
いつでも ワタシはうたうから


私たちが作ったオトを「灯り」と表現し、いつでもうたってくれると言います。そして2番では

やがて日が過ぎ 年が過ぎ
古い荷物も ふえて
あなたが かわっても
失くしたくないものは
ワタシに あずけてね


時の流れも 傷の痛みも
愛の深さも あなたの声も
ワタシは知らない だけど歌は
歌はうたえるわ だからきいて

もしもあなたが 望むのなら
何度でも 何度だって
かわらないわ あのときのまま
ハジメテノオトのまま…

自分はいつまでも変わらないから大事なものは私に預けてほしい。時間が経つのも傷の痛みも愛の深さも、そして私たちの声も自分は知らないけれど私は歌うことが出来る。もしあなたが望むのなら何度でも変わらないあの時の思いを伝えることが出来る。

これは「機械」であるミクにしか歌えない曲でしょう。これを生身の人間が唄ってもそれは「嘘」です。人は変わっていくし、忘れてしまう。どんなに「忘れない!」と思っていても次第に忘れてしまうものです。しかし、ミクが唄えばそれは真実です。機械なんだから記録したものを忘れることはないはずですから。

そして私たちはどこかで「機械にも魂が宿る、感情を持つことが出来る」と思っているような気がします。それは小さいときに見た本やマンガやアニメの影響と、「古いものには魂が宿る」という日本古来の考え方だと思ってます。モノを大事に使っていればいつかそのモノには魂が宿るのだとどこかで思っているので、機械おばあさんはずっと物語を語り続けていれば、ミクがずっと歌い続けていればもしかしたら魂が宿るかも?と思ってしまうのではないでしょうか。

こういった思いをあくまで「機械的な音」で歌い続けるこの「ハジメテノオト」にただ感動したのです。そこには感情の起伏も見られません、あくまで機械的な音で歌い上げます。しかし、だからこそこの曲に真実味を感じるのです。個人的にお勧めします。


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